激動の時代に、私たち人類は対立する両極へとますます別れていっているようです。
いまこの時、現実を知るための「正しい情報」は無いということに、そろそろ気づかないといけない局面に入っていると感じます。
私たちは混乱する現実世界を読み解こうとします。正確に理解しようと行動を起こし、「正しい情報」に辿り着きます。
起こした行動が、スマホでちゃちゃっと検索しただけであっても、リモコンでテレビをつけただけであっても、自分の世界観にあった情報であれば取り入れます。世界観にあわない場合には私たちは無意識にその情報を保留にして、あとから自分の世界観にあった情報に触れると「ああ、これが本当か」と納得して取り入れています。
2020年代に入ってからでも、様々な事が起きました。世界的な感染症を予防する注射をめぐって、これは有効であるという世界観にあなたの考えが近ければ、それを補強する情報は、権威ある機関や有力な情報源からのものが見つかります。
注射に対して不信感ををもつ世界観の人であれば、その考えを補強する情報が、権威ある機関や有力な情報源から発せられているのを見つけます。
同じように、AI技術に関してアメリカと中国のどちらが覇権を握るのか、アメリカが進んでいる、いや中国が圧倒している。どちらの世界観に立っても、有力な情報を見つけることができます。
ロシアとウクライナの戦況に関しても、トランプ大統領の評価にしても、直近ではイスラエルとイランの軍事衝突でどちらが圧倒したのか。どのトピックをとっても、あなたの世界観にあった有力な情報筋からのニュースと出会うことができます。
こういった世界の現状について、メインストリームの世界観を共有する人々は、対立する世界観の主張をフェイク情報とレッテル化して、より多くの人を我が世界観に取り入れようと働きかけます。
対立する世界観の人たちも同じように、相手の主張こそが間違った情報を元にしていると確信しています。
対立するどちらの世界観を信じる人たちも、それぞれ権威ある機関や有力な情報源からの知識をもとに主張しているのだから無理もないでしょう。
このことについて私は、どちらの陣営からも自らの世界観を補強する、もった情報が量産されるのだと考えている訳ではないです。
ある世界観を信じて確信するとき、その世界観を組み立てるのに必要なエビデンスが生まれます。また対立する世界観を信じて確信する人たちの周りには、対立する世界観を組み立てるのに必要なエビデンスが生まれていきます。
これは人類が頼っている「論理」の特徴でもあります。論理は、どんな立場の世界観でも、その正当性を組み立てることができます。
正当性のある世界観を確信している人たちが、実験をしても、調査をしても、その世界観を肯定する事実が発見されるのです。
唯一の「正しい情報」は無い。
このことに気づかなければいけない局面に私たちはいます。
いまより少しだけ大人の人類になるため、いっぽ足を踏み出さなければならない時です。
人類がなぜこの泥沼から抜け出せないのかといえば、私たちの目の前に広がる世界は「客観的で不動の現実」であるという信念が原因だといえます。
「客観的で不動の現実」である空間のなかを、私たち個としての人間が動きまわっているという世界認識。であるなら、唯一の客観的な正しい事実があるはずだという思い込み。これが人類のはまっている泥沼です。
私たちは誰一人として、同じ現実を見ていない。
同じ現実を組み立てていない。
にもかかわらず、「客観的で不動の現実」を共有していると信じこんでいる。
私たちは、もう自由にならなければいけない時です。
世界はそのまま、そっとヒトリ飛び立つことができます。