ようこそ
あなたがいま本書を読み始めたということは、世界の変化を感じ、時代が大きく移り変わっているという何かを感じているからではないでしょうか。意識的に言語化していなくても、あなたの感じる予感が導いて、本書のタイトルに反応されたのかもしれません。世界が、時代が、大きく移り変わっていくのであれば、その先に新しい時代がやってくるということを意味します。
この本では「競争」という自然の摂理とも捉えられている人類の歴史に深く根差した「原理」が、実はこの世界の根本的な「原理」ではなく、私たちが後天的に採用した「概念」に過ぎないことを明らかにしようと試みます。そして人類を数千年に渡って支配し、文明の発展を急き立ててきた「競争」という呪縛から解き放って、新しい時代に相応しい在り方を考えてみようという大胆な挑戦を、本書の使命としています。
競争が人類にとって有用であれば本書を執筆しようという私の動機は起こらないのですが、社会を見渡せば競争による弊害のほうが遥かに目立っているのではないかと思います。誹謗中傷や差別、批判、いじめや暴力、政治闘争、権力争い、富豪の貪欲、貧困、低賃金、使い捨て、言い争い、誰より先に、取った取られた、損だ得だ、割り込んだな、お前のせいだろ、役人のせい、政治が悪い、社会が悪い、そして戦争、奪い合い、殺し合い。これら全て、人の競争心から沸き起こっているものです。強い弱い、優れてる劣ってる、勝ってる負けてる。そうやって飽くことなき小競り合いがつづいてゆく。これらの弊害を我慢してもなお、競争によるイノベーションの方が重要でしょうか?
自然の摂理としか思えない競争ですが、取り巻く世界の捉え方を変えることにより、あなたの中から競争は消えて無くなります。
いま「新しい時代」の予感を多くの人が感じとり、様々な切り口で語られています。しかし本当の意味で「新しい」と呼べる「時代」は、私たち人類が支配されてきた「競争」から脱して、競争よりもパワフルな「新しい原理」で社会が回り始めたとき、真の新しい時代が始まったことになるのだろうと考えています。
少なくとも数千年続いてきた人類の行動原理を変えるという大変革を、私たちの住む「日本」から初めてみませんか。それは大それた事のようでありながら、実現の不可能なことではないと思っています。あなたが自分の生活から「競争」を取り除いて、新しい行動原理で動き始めたとき、あなたの世界の「革命」は完了するのです。本当の意味で「新しい時代」に適応した人間の誕生です。
人は他人の行動原理を変えることは出来ませんが、あなたの様子を見て、心が動かされるということはあり得ますよね。なんであんなに楽しそうなんだろう、どうしてそんなに元気なの、いつも笑っていて、なにかあった?、ねえ教えてよ。そうやって変革の波が起こり始めるかもしれません。そんな時代のうねりを生きている間に見ることができたら素晴らしいことですね。でもなにより、新しい行動原理であなたが生き始めたなら、それ以上の奇跡はなにもないのです。
「でも私の中の何かが変わったところで、私はそんなに元気にも明るくも成りようがない」、そう感じる人がいるかもしれません。しかしあなたのその感想は、競争をベースにした心持ちで生きてきたからではないでしょうか。あなたは自分本来のウィットとアーティスティックな感性に気づいていないのかもしれないし、あなたの人生が神秘と謎で散りばめられていることを忘れてしまっているだけなのかもしれない。
競争の呪縛とは、人間本来の能力を限りなく過少に見せかけてくるのです。「それは無理だ、そんなに甘くない、出来るわけないだろ」、私たちはそう教え続けられてきました。まずは、本書を読んで思い出してください。本来のあなたを。あなたの手に届く自分の可能性を。あなたの疑う気持ちをそっと仕舞って、読み始めてみてください。
本書は商業出版の書籍ではないので、ただ商品の体裁を整えるだけのページ数稼ぎの無駄な文章は入れていません。本書の使命を果たし、その趣旨を理解していただくためだけの、シンプルで最適な構成と文章を心掛けました。
著者としての印税はゼロとし、販売プラットフォームの利用料と書籍の印刷代、プラス消費税が本書の価格となっています。著作権に関しては、クリエイティブ・コモンズ準拠の「表示 – 改変禁止 4.0 国際 (CC BY-ND 4.0)」とし、本文を改変しないでいただければ、商業利用の引用や、全文をコピーして販売していただくことも構いません。
「競争」の呪縛から解放されると、これまで感じたことのないような、自由で平穏な生活が訪れますよ。それはまさに、革命といえます。しかし本書の力では成しえません。あなたの心を少しだけ開いて、読み始めていただければと思います。
この本のセンテンスの連なりを、古い世界観に変容をもたらす切っかけとしてあなたが利用したとき、革命は起こります。いままで見ていた周囲の光景が、何か違う感覚で見えたり、味わったことのない感情を伴って見えたりしたなら、それはあなたの中で革命が起こったことの証左になります。そして降り立った新しい視点こそが、新しい時代を生きるための、あなたの羅針盤となるはずです。
感じたことのない心おどる安らかな世界へ、ようこそ。
「対立から調和へ」 宮下 陽一